2013年版総務省白書は新たな潮流としてアクティブシニアの出現に着目しています。身体機能でいえば1992年の高齢者の歩行速度に比べて2002年の高齢者の速度は速くなっており、男女とも11歳若返っているという研究成果を紹介しています。白書は65歳以上の高齢者について、身体機能や認知機能が低下するという既成概念で括ることはもはや適切ではないと指摘しています。
趣味に打ち込んで気ままに生きるのも老後の一つの選択であることは認めながら、社会が抱えているさまざまな問題の解決に向けてアクティブシニアの有用活用を図る施策を推進することが重要であるとしています。元気な高齢者のパワーを傾注する分野の一つとして注目されているのが介護事業です。国の政策転換によってこの分野の仕事には国家資格を持っている人だけでなく無資格のスタッフも参入できるようになりました。潜在的な候補者が増えることで、求人に応じる人材が足りない現状の改善につなげ、同時に高齢者 就労問題の解決にも効果を生むことが期待されています。
外国人労働者とともに期待される元気な高齢者
働きたいけれども自分のキャリアとマッチする仕事が見つからないというケースはあります。政府はこうした状況の改善策として生涯現役促進地域連携事業を進め、健康で意欲と能力がある高齢者が働ける環境を作る生涯現役社会の実現を目指しています。ただ現実には現役時代とは異なる仕事に馴化するのが難しかったり、やりたい仕事があっても国家資格を持っていないから就業できないということもあります。
こうした中で高齢者を無資格の介護助手として雇用する事業が注目されています。2014年に成立した医療介護総合確保推進法に基づく基金を活用した事業で、全国的に広がっています。若い人が敬遠しがちで求人がうまくいかない業界はどこも人手不足が深刻です。介護業界もその一つで、政府は外国人が日本で就業できるような法改正を急いでいます。外国人労働者の活用も期待できますが、言葉や習慣の問題もあるため、地域に貢献したいと考えている健康な日本人高齢者の活用が注目されています。
高齢者が助手業務を継続できる仕組みが重要
労働者が足りない介護現場を改善するために導入されたのが無資格でやれる介護助手で、その担い手として期待されるのがアクティブな高齢者です。しかしいくら元気であっても、体の不自由な高齢者や障害を抱えている人を抱いて移動させたり入浴させるのは体力的に心配ですし、食事の世話も誤嚥事故の懸念を払しょくできません。そうした配慮から助手の業務内容はかなり制約されています。
着替えを見守ったり、義歯を装着する手伝いをしたり、髪形を整えるといった日常的なことのサポートが業務の中心となります。比較的簡単ですし安全な作業ですが、実はこうした日常生活行動は利用者にとっても非常に大切なことです。有資格者にとっても助手がいることで高度なサービスに専念できるメリットがあります。重要なのは、求人に応じてきた高齢者がやりがいや誇りを感じて業務を続けられるような仕組みを構築することで、無理な勤務ローテーションや長時間労働を回避する運用の整備が大切になります。